君と恋をしよう
それから持ってきたコンドームを二つサイドテーブルに置いて。あ、まんま置いたらラブホテルみたいじゃないか、ティッシュの箱の陰にね。

それからベッドの上掛けは捲って、ベッドの縁に腰掛けて待っていると、彼女は身体にバスタオルを巻き付けて出てきた。

胸の辺りをしっかり押さえて、真っ赤な顔で俯いている。

「こっちおいで」

なるべく優しく言った。

「髪……乾かした方が……」

ほんの少し濡れていた。
髪なんかどうでもいい!とは思っても、大人の余裕を被って答える。

「気になるなら乾かしたら? 待ってるよ」

彼女は俯いて小さく頭を左右に振って、しずしずと寄って来る。

「ここに座って」

僕の右の大腿を示した、彼女は大人しく座った、良かった、これでひねくれて外向きに座ったらどうしようかと思ったが、彼女はちゃんと内側に座ってくれた、細いウエストを抱いた、彼女はぴくりと背筋を伸ばす。

タオル越しの体温を感じた、布越しでも柔らかい肢体が伝わってくる、素肌はどれだけ滑らかだろう。

両腕でしっかり抱き寄せて言った。

「萌絵……」

途端に彼女の体が震え出した、緊張から、とかそんな生易しいものではない、ガタガタと震え出したのだ。

「萌絵?」

腰を抱いたまま見上げた、彼女間違いなく青ざめて、まるで極寒の地にいるか如く自身の体を抱きしめていた。

「萌絵、ごめん、そんなに嫌なら……」
「思い、出した……っ」

震える両手で口を覆った。

「写真……撮られた……!」
「萌絵?」

言った瞬間判った、事件の、記憶だ。

「……なまえ、よばれて。しってるひとかとおもったけど、しらないおにいちゃんだった」

萌絵はたどたどしい口調で話し出した。

「レジぶくろ、もってた。わたしがすきなおかしがみえて、たべる?っていわれたから、うんってこたえたの。

おかあさんやおとうさんには、おかしあげるとか、かってあげるっていわれたらついていっちゃダメっていわれてたから、たべるんならいいんだっておもって、おにいちゃんといったの。

だれもいないとこで、おいすにすわって、おにいちゃんのおひざにすわったの。

どれでもいいよってふくろみせてくれて、わたし、すきなおかしたべた」

おひざ……正にこの状態なのか? この状態が駄目なら下ろして……抱こうと腕に力を込めると、彼女の体が更に強張った、硬くなった体を抱き上げられずにいると。

「スカート、めくった、パンツ、よごてるよって、いわれた」

彼女は声を震わせて言った。
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