君と恋をしよう
「このままかえったらおこられちゃうよって。パンツぬいだほうがいいよって。ぬがしてあげるっていうから、ぬがしてもらったの。そのひと、わたしのパンツ、ポッケにしまった」

彼女は両手で顔を覆った、つらい記憶なんだろう、このまま話をさせていていいのか? 僕はその道に詳しくない、膿を出し切るようしたほうがいいのか、無理にでも止めた方がいいのか……!?

「わたしこわくなってにげたかった、でもおにいちゃんはわたしをまただっこして、はなしてくれなくて。
スカートめくって、あし、ちょっとひらいてっていわれて……ちいさなカメラで、いっぱい、写真、とって、た……」

「萌絵」

「わたし、いやだった。いけないことした。パパとママにおこられちゃうから、ぜったい、ないしょにしておこうとおもった。あんなとこ、しらないひとにみせちゃいけないの、こわかったの、いやだっていったらもっとひどいことされそうでこわかったの、にげたらもっとひどいことされそうで、こわかったの……!」

「萌絵、もう大丈夫だよ」

できるだけ優しい声で言った。

「どうしよう、どうしよう……いわなくちゃ、またくるかも、いわなくちゃ、べつのこがおなじことされたらいや、でもいったらおこられちゃう、パパにもママにも、あのおにいちゃんにも……!」

「萌絵!」

思わず声を荒げた、どんどん蒼白になっていくな萌絵を見ていられなかった。

「ちゃんと見て。今君といるのは僕だ、僕は君が嫌がる事はしない」

萌絵がようやく顔を上げて僕を見た、涙が零れ落ちた。

「た……ちゃん……」
「そう僕だよ。思い出したんだね、それがいいか悪いか僕には判らない、でも、君は一歩踏み出したのは判る」
「たっちゃん……」

僕は萌絵を抱き締めた、出来るだけ強く。

「私……覚えてた……あの人……私を……!」
「うん、大丈夫。もうあの人はいないから」

僕が言うと、萌絵は僕の肩に腕を回してしっかりと抱き付いてきた。

「知ってる、人だった?」

僕の言葉に、萌絵は懸命に頭を左右に振る。

「全然知らない人……誰だろうって思いながらお菓子もらったの……なんで私の名前、知ってたんだろう……」
「萌絵一人で居たんでなければ、誰かが呼んだのを聞いて、萌絵を狙ってたんだろうね」

そっと小さな背中を撫でた、まだ微かに震えている。

「今日はやめよう、つらいだろ、また今度……」
「いいの!」

萌絵の腕に力が入った。

「こんな状態で一人にしないで……!」
「萌絵」
「たっちゃんが嫌ならいい……他の人が触ったかも知れない体じゃ……」
「どこか、触られたの?」

萌絵は慌てて頭を振る。
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