君と恋をしよう
***
25日の昼頃、軽井沢を後にした。
自宅に車を戻して、夜は横浜のクリスマスを楽しんだ。
こちらは雪が降った形跡もない。散歩がてら横浜駅からみなとみらいを抜け、山下公園まで行った、さすがに何処もカップルだらけだ、平日の夜だと言うのに。
でも今夜は、僕だってちょっと誇らしい。
だって、若くて可愛い恋人と一緒だ、みんな見てくれとすら思う。
指を絡ませて繋いだ手に、更に腕を絡ませている、ずっと温かく柔らかい胸が当たったままだ。
僕の視線に気付いた萌絵が顔を上げる、一瞬で頬が赤くなった、まだ初々しいところがなんともそそられる。
ふと前方を見ると、見覚えのある女性がいた──なんてことだ、元妻、淳美だ。
こんなところにいるなんて……。
隣には男がいた、20代半ばと見えるひょろりと背の高い男だった、そいつを見上げ微笑みながら会話をしている……その表情からも、特別な関係なのだと連想できた。
手は繋いでいない、でもクリスマスの夜にこんなところでデートと言う事は、やはりそういう関係なのだろう、でもまだ日が浅いのか。
邪魔をしては悪いか、などと思ってさりげなく道を反れようと萌絵を見下ろした時。
「……たつや」
淳美の声がした、何故、声を、かけるのか……!
無視もできず、淳美と対峙した、僕は自然と微笑む事ができた。
「久しぶり、淳美」
言うと淳美は僅かに視線をそらした、まさか挨拶するなどとは思っていなかった様子だ。
僕と繋がる萌絵の手に力が入った、萌絵は淳美の顔は知らない、それでも関係は判ったのかもしれない。
淳美がちらりと萌絵を見たのが判った、しかし、表情は何も変えずに。
「……久しぶりね」
小さな声で言った。
前のマンションで会ったのが最後だ。
七カ月振りの再会、それ以上に会っていない友人などもっといるのに、淳美と暮らした日々がそれよりもずっと遠い昔の事のようだ。
その時、萌絵が更に腕に力を込めた、体を寄せてくる、あまり深入りは良くないと思った、萌絵が不安がっている。
「じゃ」
短く言って、萌絵の手を強く握って歩き出す、元々行こうとしていた、真っすぐの道を、淳美達が来た道の先へ。
すれ違う瞬間、淳美が息を吸ったのが判った、何か言うのか、と一瞬身構えたが何も言わなかった。
十分離れた頃、萌絵が呟く様に言った。
「……今晩、たっちゃんちに泊まりたい」
それはどうして──言いかけてやめる。
「でも、竹内さんには二泊三日って言ってあるんだろう?」
「連絡すれば大丈夫だよ」
「でも明日は会社だよ? 出勤できる恰好じゃないじゃない」
「朝、一旦家に戻って着替えるから」
萌絵が僕の腕にしがみつくようにして足を止めた。
「──駄目?」
上目遣いで頬を染めて、なんて可愛い懇願、こんなお願いを断る男がいたなら、そいつは絶対男じゃない。
「いいよ、その代わり」
僕が言うと、萌絵は急に姿勢を正した、『代わり』が何なのかと思ったのだろう、それが可愛くて思わず微笑んだ。
「今夜は眠れないかもよ?」
小声で言うと、萌絵は恥ずかしそうに顔中を真っ赤にして、何度も何度も頷いていた。
25日の昼頃、軽井沢を後にした。
自宅に車を戻して、夜は横浜のクリスマスを楽しんだ。
こちらは雪が降った形跡もない。散歩がてら横浜駅からみなとみらいを抜け、山下公園まで行った、さすがに何処もカップルだらけだ、平日の夜だと言うのに。
でも今夜は、僕だってちょっと誇らしい。
だって、若くて可愛い恋人と一緒だ、みんな見てくれとすら思う。
指を絡ませて繋いだ手に、更に腕を絡ませている、ずっと温かく柔らかい胸が当たったままだ。
僕の視線に気付いた萌絵が顔を上げる、一瞬で頬が赤くなった、まだ初々しいところがなんともそそられる。
ふと前方を見ると、見覚えのある女性がいた──なんてことだ、元妻、淳美だ。
こんなところにいるなんて……。
隣には男がいた、20代半ばと見えるひょろりと背の高い男だった、そいつを見上げ微笑みながら会話をしている……その表情からも、特別な関係なのだと連想できた。
手は繋いでいない、でもクリスマスの夜にこんなところでデートと言う事は、やはりそういう関係なのだろう、でもまだ日が浅いのか。
邪魔をしては悪いか、などと思ってさりげなく道を反れようと萌絵を見下ろした時。
「……たつや」
淳美の声がした、何故、声を、かけるのか……!
無視もできず、淳美と対峙した、僕は自然と微笑む事ができた。
「久しぶり、淳美」
言うと淳美は僅かに視線をそらした、まさか挨拶するなどとは思っていなかった様子だ。
僕と繋がる萌絵の手に力が入った、萌絵は淳美の顔は知らない、それでも関係は判ったのかもしれない。
淳美がちらりと萌絵を見たのが判った、しかし、表情は何も変えずに。
「……久しぶりね」
小さな声で言った。
前のマンションで会ったのが最後だ。
七カ月振りの再会、それ以上に会っていない友人などもっといるのに、淳美と暮らした日々がそれよりもずっと遠い昔の事のようだ。
その時、萌絵が更に腕に力を込めた、体を寄せてくる、あまり深入りは良くないと思った、萌絵が不安がっている。
「じゃ」
短く言って、萌絵の手を強く握って歩き出す、元々行こうとしていた、真っすぐの道を、淳美達が来た道の先へ。
すれ違う瞬間、淳美が息を吸ったのが判った、何か言うのか、と一瞬身構えたが何も言わなかった。
十分離れた頃、萌絵が呟く様に言った。
「……今晩、たっちゃんちに泊まりたい」
それはどうして──言いかけてやめる。
「でも、竹内さんには二泊三日って言ってあるんだろう?」
「連絡すれば大丈夫だよ」
「でも明日は会社だよ? 出勤できる恰好じゃないじゃない」
「朝、一旦家に戻って着替えるから」
萌絵が僕の腕にしがみつくようにして足を止めた。
「──駄目?」
上目遣いで頬を染めて、なんて可愛い懇願、こんなお願いを断る男がいたなら、そいつは絶対男じゃない。
「いいよ、その代わり」
僕が言うと、萌絵は急に姿勢を正した、『代わり』が何なのかと思ったのだろう、それが可愛くて思わず微笑んだ。
「今夜は眠れないかもよ?」
小声で言うと、萌絵は恥ずかしそうに顔中を真っ赤にして、何度も何度も頷いていた。