君と恋をしよう
「僕は淳美を愛してる、それだけじゃダメなのか?」
「ダメなの……!」
彼女は完璧主義だ、自分が決めた事は、そう簡単に曲げない。
僕は了承した、心の何処かで離婚することを確信していた。
半年間、僕達はひたすら夫婦生活を営んだ。
そんな、可愛い表現では効かないな、まさしく『交尾』だった、前戯も後戯もない、彼女は「どうぞ」と体を開き、僕は「どうも」と彼女の中に入る。
正直勃たない、絶倫な男なら女性の本来隠されている部分を見れば興奮するかも知れないが、僕には無理だった。
いやらしい動画や画像で興奮させて、本番の時は正直別の事を考えていた、まだ交際を始めて間もない頃の初々しい淳美ならまだしも、元カノだったり、果ては昔お世話になったAV嬢など……自分でも最低だとは思うが、僕の体の下の淳美は大してよがりもしないし、目が合えば睨まれた──今度こそ孕らせろよ、と言っていた。
ある日トイレから出てきた彼女は不機嫌だった。
すぐに判る、今月も生理が来たんだ。
一旦部屋に行った彼女が、手に用紙を持って戻ってきた。
「来月生理が来たら提出するから」
離婚届。
「あとはあなたの名前だけよ」
それを見て思った、きっと彼女も妊娠なんかしないだろうと思っていたんだろう。
じゃあなんで僕なんかと……別れたいのなら、さっさと別れればいいのに。
それでも彼女は生理が終わるとまた関係を求めて来た。
僕の子が欲しいのだろうか……僕はそんなに優秀な遺伝子では、ないと思うんだけど……。
そして翌月、生理は来た。
「──今週中には出て行って」
生理が来ると、すぐに離婚の話をした。
マンションは売りに出して現金化して折半に。殆どローンで消えてしまう。共有で使っていた家具、家電などは全て淳美のものに。僕が持ち出していいのは、僕が結婚前から使っていた机とAV機器、衣類だけだった。
僕は一切異を唱えなかった。
面倒だった。
早く別れたかった。
愛は冷めていた。
翌日には数着のスーツを持って、横浜駅近くのホテルに連泊を申し込んだ。
そして出社すると、一番に後輩であり部下でもある男子社員を捕まえた。
「田代くん」
「はよーっす、藤木さん! なんすか?」
「おはよ……あのさ、やっぱ離婚したわ」
「えええーっ!」
さすがに声は抑えてくれた。
「だからさ、やっぱ結婚式は遠慮しとくよ」
「いや、あの、マジで藤木さんさえ嫌じゃなかったら、来て欲しいですけど」
*
可愛い後輩から結婚の報告があったのは10カ月前。
「藤木さんのお陰で今の俺があるっす! 来てください、んでスピーチお願いします!」
僕はすぐに言った。