【超短】夏一夜の恋。【完】
 ──花火が終わり、夏祭りも終わっていく。


花火会場の出入り口に着き、立ち止まってまた見つめ合う。



「あの……ありがとうございました」

「うん。俺の方こそ、ありがとう。今日はホントに楽しかったよ」

「私の方こそ……。優さんにナンパされてよかったです」

「ナンパって……。ひどいなぁ」

「えへへ……」



ぎゅっと繋がった優さんの右の手を握る。

優さんもそれに応えて、握り返してくれる。



「奏絵ちゃん、ホントにありがとう。いい思い出になったよ」

「そんな……」

「最後の夏祭り、ホントに楽しかったよ」

「え? 最後の……夏祭り?」



え、優さん……何、言ってるの?


聞き間違い?

首を傾げて、優さんを見ると、優さんの顔がどんどん歪んでいく。

やがて、優さんは悲しそうに微笑む。


嫌な予感がして、優さんの手を両手で包み込む。



「どこか、行っちゃうんですか?」



優さんはそれに力なく首を振る。



「じゃあ、どうして……。好きって、言ったのに……好きって、言ってくれたのに……っ」
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