【超短】夏一夜の恋。【完】
「奏絵ちゃん……ホントにごめん」

「やだ……っ」



涙が溢れて……止まらない。

ボロボロと大きな粒が流れて、流れて……拭いても、拭いてもキリがない。


どうして、謝るの?

謝るぐらいなら、一緒にいて……!



止まらない涙を見かねて、優さんの指が私の目元に来てその涙を止めようとしてくれる。

でも、止まらない。

だって、優さんの指は……やっぱり冷たかったから。



「優、さんっ……」

「奏絵ちゃん、ごめん……。行かなきゃいけないんだ」

「どこに、行くって言うんですか……!」



こんなこと、言いたいんじゃない。

だって、すごく怖い。

だって……。



「俺はもう……死んでるんだ」

「そんな……! 優さんは死んでなんかいません! 死んでなんか──死んでなんか……!」

「奏絵ちゃん……」

「お願い、そんなこと言わないで……。私、もっと……優さんといたい……んです!」



優さんは死んでなんかいない。

優さんは幽霊なんかじゃない。


でも、そう思えば思うほど、優さんの手が冷たくなっていく気がして……。

別れが近いんだって実感させられる。
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