【超短】夏一夜の恋。【完】
「ははっ、真っ赤な奏絵ちゃんも可愛いね。りんご飴みたい」

「ゆ、ゆっ……ゆゆゆっ、優っ、さん……っ!?」

「奏絵ちゃんもおもしろいね。一緒にいてて飽きなさそう」



あははははっ……とお腹を抱えて笑い出した優さんに対して、私はただただ恥ずかしい。

やがて、恥ずかしさが怒りに変わる。



「も、もーっ! からかわないでください!」



いつまでも笑う優さんの腹にぽかぽかと両手で叩く。

優さんは笑いながら「痛い、痛い」と言う。



「ごめん、ごめん。奏絵ちゃんがあまりにも可愛いから、ついからかいたくなっちゃった」

「もうっ……」

「楽しいよ。奏絵ちゃんといて。今夜だけなんて言わず、もっと一緒にいたいな?」



じっ……と先のようなふざけた顔から真剣なものに変わって、ビクッと思わず体が震えた。


私も、もっと優さんといたいな……。


ひと夏の恋なんて長続きしない──とか言うが、きっと優さんとならいい恋ができそうと思える。



「あの……」

「ごめん。俺から今夜だけって言ったんだから、それはないよね」

「え。あ、あのっ」

「あー、さっきのは忘れて。──さっ、もっと夏祭り、楽しもう?」

「はい……」



ホントはもっと一緒にいたい……。

たったそれだけのことも言えないなんて。

恋って……


 切ない。
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