輝きに満ちた世界で


もう繋がない手。



私たちの背中に大きな歓声が向けられる。



このステージに立っていられるのはあとどれだけだろうか。



10秒?15秒?わからない。
でも、この時間を噛み締めていたい。



辿り着いたバックヤードの手前。
振り向いて結城と頭を下げる。



その下げた頭をあげたときだった。



体の横に添えていた手を引かれる。
突然のことで何もわからずにいた。





瞬きをした次の瞬間、結城の顔が目の前にあり、唇に熱を感じた。



私の所からは客席もなにも見えない。



ただ、結城の顔しか見えなかった。



遠くで観客の声が聞こえる。



きっと客席からは見えるか見えないか...
ギリギリのところなんだろう。



けれどバックヤードからは確かに私たちがキスしてることは見える。



こんな時なのに自分でも驚くほど冷静だった。

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