輝きに満ちた世界で


その後はアップの撮影だった。
さっきの感覚を思い出しながら笑顔を浮かべる。



カメラを向けられて、シャッターをきられて、写真を取られる。



案外、不快なものでもない。





初めて知った世界。
これが私の憧れていたキラキラした世界。



片足だけ突っ込んでみて少し堪能する権利ぐらい、くすんだ私にもあるでしょう?

この1日で少しくもりも剥がれたんじゃないか。

輝きに近付けたんじゃないか。
そう信じてもいいんじゃないか、そう思う自分がいた。



「はい、小夜ちゃん。
最後に顔のアップの撮るよー。」



パシャ



乾いたシャッター音が私の耳に残る。



「はい、OKでーす。
お疲れ様、次の撮影もお願いね。」



私はカメラマンに深く頭を下げた。



「ま、そんなことつまらない戯言だけどね。」

< 42 / 252 >

この作品をシェア

pagetop