恋は甘い蜜の味
第1章
カフェ『JEWEL』
チリンチリンッ――
扉が開くと同時に鳴る心地よいベルの音色。
その音を聞くたびに心が安らぐんだ。
何回聴いても飽きない…っていうのは、きっとこのことを言うんだろうな。
「ありがとうございましたっ」
帰っていくお客様の後ろ姿を見届けながら小さくお辞儀をする私は、今年で20歳を迎えるカフェ店員、田宮春乃。
家庭の事情ってやつで、中学卒業後は母の後輩で、ここカフェJEWELのオーナーである秀さんに頼んでウエイトレスとしてJEWELで働かせてもらってるの。
お店はあまり広くはないんだけど、凄くお洒落で女性のお客様に大人気。
カップルで利用する人も少なくないんだよね。
落ち着いた空間っていうのは人に好かれやすいみたい。
「春乃、休憩入るわよ?」
「あっ、はい!」
あ…、言い忘れてたんだけど、オーナーの秀さんってれっきとした男なんだけど、口調は今流行りの?おネエ言葉。
まぁ似合ってるから別に構わないんだけど…ちょっと変わった人なのです。
ちなみに年は34歳。小さい頃からカフェを経営することに憧れてたみたいなの。