さよならまた明日
ヒサエは一旦受話器を置いて、よっこいしょと呟き立ち上がった。
途中何もないところで自分の右足に自分の左足がひっかかり、こけそうになりながらもカレンダーがあるところまで歩いた。
カレンダーには予定がビッシリ書かれている。
この日は近所の人とお食事に行く、この日はカラオケで歌う、この日は買い物するなど。
かりんが言ってた日は珍しく何も予定がなかった。
窓の外の雑草がゆらゆらと揺れていることから、外は風が吹いていることがわかる。
スケジュールを確認したヒサエはまた椅子に座り、置いていた受話器を持って耳に当てた。
「もしもし?かりんちゃん?15日はなんにも予定が入ってないから大丈夫。」
「ほんと、ありがとう。」
「かりんちゃんが来るまえに色々準備しときたいから何人で来るか教えてくれる?」
「わたしひとりだけよ?」
「ああ、そうなのね。わかった。」
「おばちゃんとこいくまえに、一度電話するね」
「わかった。」
そういって電話を切った。
窓の外はだんだんと日が沈んでいる。
風は変わらず吹いている。
ヒサエは何を思ったのか、かりん宛に手紙を書き出した。
長い長い文章だった。それを封筒の中に入れ、封をし、封筒の表にかりんちゃんへと書いて、机の上に置いた。
一人暮らしのヒサエはその後夕食や風呂など済ませ、ゆっくり床についた。
電気を消した部屋の中でヒサエはかりんのことを考えていた。
考えているうちに眠ってしまった。
静かに寝息をたてる部屋の時計は午後10時半になったばかりだった。



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