エテレイン
「陽太やめろ。
・・・なぁ、演奏だけでも聞いてけよ。」



落ち着いた、なのにさっきのバスドラと同じくらい響く森の低い声。



『聞くくらいなら。
折角、来たわけだし。』



このまま帰るのも後味悪い。



真っ直ぐ見つめてくる森は私の言葉を聞いてニヒルに笑った。



「俺らの演奏聞いてからもう一度聞く。」



何回聞かれたって答えは同じはず。
なのに、なぜだか森の自信のある表情に少しだけモヤモヤした気持ちが揺れ動く。



開演はまもなく、という事でアリーナの後ろ側・・・壁に寄りかかってステージを眺める。



バンドのライブ、見るの初めてかも。



森たちのバンドはトリ。
今日出演しているバンドは6組。



歌は上手い。
でも、バンドのそれとはまた別の話で。
厳しいことを言えば、歌いたいならカラオケでという感じ。



バンドとしては今ひとつ。



「さて、お次で最後。
エテレイン!」
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