だから何ですか?Ⅱ【Memory】
前髪が鬱陶しい。
でも、どこまでも安心する。
目元を遮る伸びきった自分の前髪に鬱陶しさと安堵と言う矛盾した感覚を浮上させるも、一瞬。
次の瞬間にはどちらもどうでもいいと感覚を捨てて、あてもなく無人化した暗い街中を進んでシャッターを切る。
なんて楽なのか。
なんて開放的なのか。
人がいないという事は人からの印象というものを気にしなくていいという事で、自分すら自分に意識しなくていいという事。
この唇が意図的な言葉を紡がなくなってどれくらいか。
耳が全てを雑音として聞き取り自分の内側に取り込まなくなったのはいつごろか。
自分に関わる全てが面倒で、全てを拒んで手放してもうしばらく経つ。
今はいくつだったか・・・・、
ハタチ・・・か。
17の歳に徐々に捨て始めたのだ。
自分の声さえも捨てて早3年目。
どうせ・・・私の声など誰も聞いてくれはしない。
私の訴えを聞く義理がある人はいない。
無償で向き合ってくれる人などいない。
こんな風に全てを見放したように生きているくせに死にたいと言う選択肢を選ばないのは僅かに残っている負けず嫌いだったのか。