だから何ですか?Ⅱ【Memory】



不採用。


そんなのは珍しくもない。


いつだって自分の案が誰からも評価されて採用されるわけじゃない。


エースだなんだと持て囃されていてもその言葉に調子に乗って、その通りだと驕った事はない。


それでも、不採用になった今回の案は自分の中でもかなりの上出来だと思っていたからこそ余計にショックが大きいと言うのか。


手ごたえがあった。


己惚れなんかでなく商品の魅力を最大限に発揮できたと。


なのにそんな自信を打ち砕く様な不採用の報告。


コレ・・・久々に本気でくる。


えっ?・・・あれ、ダメ?


なんて結果はもう出ているのにまだどこか『嘘だろ?』とあきらめきれない感覚があって。


それでもいくら今部長に掛け合おうが結果が変わるわけもないことくらいは理性的に分かっている。


つまりは・・・どんなにもどかしく悔しかろうが飲み込むしかないのだ。


ああ、それでも・・・。


これだけは確認しておかねばと、フロアに向けていた体を部長に戻し、すでにPCにその視線を向けていた部長に『あの、』と声をかけると、



「ちなみに・・・どこの、誰の案に決まったんですかね?」


「ああ、確か・・・IS広告社だったよ。名前は・・・」



そんな事を言いながらその情報が書いてあるらしいメモを探し始める部長。


そんな姿を眺めながらも、『不採用か』と心底落胆しもどかしい感情を静かに深く息として吐きだした。







IS広告社ね・・・。


なんの因縁があるんだか。







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