だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「あ~~・・・」
寒い。
身体も心も極寒。
そんな事を思いながら屋上の柵に組んだ腕を乗せ、冷たい空気に煙草の煙を溜め息と一緒に吐きだした。
そんな自分の上に広がるのは晴天。
まったく俺の心はお構いなしに青々とした雲一つない空をチラリと捉えてすぐに外す。
次の仕事頑張れって言われてもなかなかモチベーションが上がらんのですよ。
そんな言い訳を誰にしているのやら、心でぼやいて煙草を口に。
自分の仕事に驕っていたつもりはない。
つもりはないけど最近は成功続きだったからな。
久しぶりの不採用は免疫が薄くなっていてかなりダメージが大きいな。
このテンションをどうやって上げてみようものか。
新年を迎えて気持ちも引き締め直した矢先のこの状況。
一瞬にして灰色気分だと項垂れて、見事に他の仕事にも気分が乗りきれなかったこれまでの時間。
どうしたもんかなぁ。なんて再び大きな溜め息をつき、何の気なしにくるりと向きを変え柵に寄りかかった直後。
「っ・・・ビックリしたぁ!」
第一声はその一言。
心から驚いての発声。
振り返ればいつも煙草を吸う場所が視界に映って、その場所にいるとは思って無かった亜豆がいつの間にか存在し無言で煙草を吹かしていたわけだ。