だから何ですか?Ⅱ【Memory】
ああ、なんか・・・煙草混じりのキスって久しぶりな気がする。
そんな感覚にクスリと笑いながら唇を離すも、顔の距離を離すのは惜しまれて額を寄せて。
今も綺麗な弧を描く艶やかな唇をフニッと親指で押しながら、
「俺の前じゃよく形を変える唇だな」
「猫缶の隠し味です」
「フハッ、笑わすな」
「良かった。笑うほどは回復しましたね」
「・・・・ストーカー様様だな」
確かに、気がつけばだいぶショックは軽減されて自然と笑っていると思う。
勿論まだ不採用になったショックは消化しきれていないんだけども、それ一色の負の状態からは抜け出した気がする。
亜豆効果だな。と再度軽く唇を啄んでから元の姿勢に戻り、煙草を口に運んで一息。
そうして少しばかり心に余裕が出来れば自分以外の事に意識が走り始めて思いだしたように記憶の引き上げ。
「そういや、ここに来る前にお姉さま方に弄られたって?」
「ああ、はい。やっとそこ気になりました?」
「すまんねぇ。さっきまで自分のショックでいっぱいいっぱいだった」
「じゃあ、多少落ち着いたという事で私からもお話がありまして」
「・・・・なに、その改まり。なんか恐いんだけど?」
自分から引き上げたとはいえこの改まった様な雰囲気の切り替えはなんか予想外で結構恐い。
すでに短くなっていた煙草を灰皿に押しつぶした亜豆が真顔に戻ってこちらに体を向けて、探るような視線で俺の双眸を見つめてくる。