だから何ですか?Ⅱ【Memory】
服装は・・・いつの間にか定着していた。
黒か濃紺のパーカーワンピ。
フードはしっかりと深くかぶり、そこから覗くのは伸ばしっぱなしの髪と血色の悪い白い肌と。
鬱陶しいと思えどフードも外せなければ長い前髪も切ろうとは思わない。
むしろこれが無いと酸欠にでもなってしまう気がする。
それにこんな装いは悪印象というガードが身を守ってくれたりもする。
誰だってまともな感覚を持ち合わせていれば薄気味悪い人間に近づこうとは思わない筈だ。
特に顔が明確にならないような人間は更に。
だから時々無人化した世界にポツリ人影を感じても向こうの方が避けてくれる。
見て見ぬふり。
いや、基本目的がある人間はそう他人にそこまで興味を示していないのだ。
だからきっと、『なんかいる』と一瞬の確認の後には私の存在など記憶の隅から消えて行っているであろう。
それでいい。
それがいい。
誰も私を認識しなくていい。
そう思っていたのに。
そう思って、この瞬間だって悪印象が身を守ってくれると思っていたのに。