だから何ですか?Ⅱ【Memory】




撮った写真を確認するためデジカメに視線を落として歩きぬけていた道のり。


今日もいっぱい撮った。


これを更に加工したらどんな独特の世界に色を変えて見せてくれるだろうか?


唯一の楽しみとして撮った写真を加工するのが私の当たり前の日常で、どの写真がより面白い物になるだろうかとピッピッと音を響かせ写真の画像を送って確認。


フードと前髪という視界の悪さにプラスして、完全に下を向いて歩いて前方不注意。


それでもこの時間にまずぶつかってくるような人影もそういないと分かっているからの行動だった。


頭の中では写真の加工の事もあったけれど、そろそろ日の出が近い空の明るみに足を速めていて見終わったデジカメを電源を切りポケット戻しかけていた瞬間。



「ねーえ、」



耳に響いたのは馴れ馴れしく、気持ち悪くも絡み付いてくるような呼びかけだ。


しかも前方からの響きにはいつもは聞き流す自分も視線を動かさざるを得なくて。


フードと髪の隙間を縫って捉えたのは軽薄そうで、暴力的そうで、決して友好的とは思えない笑みで私の行く手を通せんぼしている茶髪の男。


身なりはダメージデニムのパンツにシンプルなロンT。


髪はどれだけ脱色を繰り返しての染色なのか痛み切った感丸出しの赤茶。


耳にはジャラジャラとピアスがついていて唇にも一つ。


指にはごつごつとした指輪を2つか。


如何にも絡み屋と主張大な姿に畏怖よりも呆れよりも・・・どうでもいい。



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