だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「・・・お兄さん達、」
上げた手を遮る様に、空気を破るように響いた声音は今までいなかった人間の音。
しかも攻撃的でなく、『ちょっと、すみません』とばかりに割って入ってきた声の主は、私に掴みかかって手をあげかけていた方の男の肩をトントンと叩いて気を引いて。
現状、視界の悪い私にはあまりクリアにその第三者の姿は捉えられない。
それでもこの2人の仲間ではないのだと判断がついたタイミング、
「コーヒーはお好き?」
どこまでもご機嫌覗いの様な口調と言葉。
そう感じた刹那、『熱っ!!』『ウッ』と、悶絶する声と解放された自分の体と。
嫌悪感でよろめきへたりとその場に座りこむ私より早く、鈍い声を漏らした男2人が地面に崩れる事の方が早かったと思う。
何故崩れ落ちたのかは髪の隙間からしっかりとその目に収めていた。
第三者の男が『コーヒーはお好き?』なんて声かけをして意識を引いた直後、自分が飲んでいたらしい湯気の立つそれを男2人の顔にぶっかけたのだ。
そうして怯んだ2人に驚くほど速く一人の頬を殴りつけ、もう一人の鳩尾に蹴りを入れた。
結果私より早く地面に沈んで今も動けない程悶絶してるのは彼らだ。