だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「可哀想に・・・まだ片想いか」
「っ・・・つきあってるって言ってるでしょ!」
「つきあってるねぇ。【今の】リオと伊万里はね」
「・・・・」
「でも、・・・一途で健気な過去のリオは報われないまま片想いだ」
「っ・・・」
「違う?言ってないんでしょ?・・・自分が誰で、その好意がいつからの一途さか」
「そんなの・・・ミケには関係ない」
「まぁね。・・・でも、面白くはないよね」
「えっ、」
不意に、ほんの僅か声のトーンが低くなった気がした。
それを確かめようといつの間にか落としていた視線をミケに戻すも、映り込むのはやはり笑顔。
いつも思う。
ミケの笑顔と私の無表情は質が似ていると。
一定のその表情を貼り続けることで心の内をそうそう明かさない様な。
でも、だからこそお互いに表面の表情に騙されない私達だ。
ミケは今・・・笑ってなんかいない。
感じるのは・・・もどかしいとか、苛立ちとか、葛藤と言われるような感情。
「面白いわけないよ。・・・ずっと伊万里役になる事でリオの恋人してたんだから」
「っ・・・」
「俺が楽しんで、喜んでその役に徹してたと思う?」
「ミケ・・・」
「提案したのは俺だけどね、そうでもしなきゃ絶対にリオは俺なんか見向きもしなかったでしょ?始まりはね、それでいいと思ってたよ、その内自分に意識を向けさせる自信があった。始まりが負けでも逆転する自信があった」
何でだろう。
にっこりと、他者を魅了せんばかりの綺麗な笑みで言葉を弾かれているというのに、私が持ち合わせるフィルター越しではどこまでも悲痛な表情と声音に聞こえて。