だから何ですか?Ⅱ【Memory】
何も言い返せないのは・・・ミケの言う通りだから。
ミケに伊万里さんを被せて恋愛をしていたという否めない過去の事実があるから。
だからこそ・・・見つめるしか今は何も出来なくて、浴びせられる言葉を素直に受けるしか出来ない。
ミケが初めて漏らした不満だから。
「・・・・勝手にいなくなった」
「・・・えっ?」
「勝手にいなくなったって俺に言ったけど、違うよ」
「だって・・・」
「海外赴任が決まった時、『ついてくる?』って聞いたよね?」
「・・・聞いた。聞いてくれたよ。でも、私それに『行かない』なんて返事してない」
「『行く』とも返事してない。・・・『考えさせて』だったっけ?」
「そうだよ。『考えさせて』って言った。なのに、その後すぐ何も言わずに勝手にいなくなったのはミケでしょ」
何も言わずだった。
突然、忽然と姿を消した。
最後に会った日の最後の瞬間まで笑っていた癖に、次の日もその次の日も同じように顔を合わせるのだと言うように。
なのに・・・いなくなった。
行く場所も、連絡先も知らない、聞かされてない。
調べればわかったのかもしれない。
それでも調べず、追いかけなかったのは・・・結局、ミケは私を見限ったのだと思ったから。