だから何ですか?Ⅱ【Memory】



なんて性質の悪い男なのか。


味方であるうちは、甘さだけを与えられている内はその性質の悪さの餌食になる事が無かった。


だからこそ今更それを理解して、うんざりとした感じに眉根を寄せるのに、対峙する姿はどこまでも愉快気にクスクス笑いながらコートを羽織り始める。


そうだ、さっさと帰れ。


絶対に玄関までも見送らないぞ。と、腕を組みあからさまにミケからは視線を外して不機嫌を露わにしていたのに。



「っ・・・」


「忘れてた、」



抱き寄せられた力は酷く柔らかく優しい物であったのに。


そのまま抱き締める力も然り。


なのに咄嗟に振りほどけず、困惑に満ちた自分に落とされる、



「今も大好きだよ、・・・リオ」



一言に、どれほど愛情と言う甘さを乗せに来たのか。


濃厚で濃密で糖度の高い。


あまりに高すぎて酔ってしまいそうな程。


ミケは分かってない。


確かに私は伊万里さんを被せてミケと恋愛をしていた自覚がある。


でも、それが出来たのはミケだからだ。


誰でもいいわけじゃない。


ミケだから。


ミケにもちゃんと恋愛感情の要素は持ち合わせていたから、ミケとしても好きだったから。


だから・・・あの時、『考える』程ついて行くことを迷ったのに。



「悪いけど・・・、伊万里さんが好き」


「フッ、そんなリオだからますます好き」



まったく酔えないと無表情で告白を流せば、それすらも嬉し気に本気で惚れ直したと言いたげに微笑んでくるミケ。


どこまでも歪んだ繋がりだ・・・私とミケは。


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