だから何ですか?Ⅱ【Memory】
すでにブラックリスト?
迷惑行為だと理解して尚こうして出向いて頭を下げて何日目か。
最初は笑顔を作って貼り付けていた受付嬢も最近は厄介者が来たとばかりの目を向ける。
それでも、どうしても伊万里さんに機会を与えてはもらえぬだろうかと頭を下げ続けた数日。
普通に考えれば無理な事だと分かっている。
それでも繰り返したのは彼の為と言うより自分の欲求を満たす為に過ぎない。
電話をかけたかった。
声を聞きたかった。
それを為すには番号を聞き出した際の約束を守ってこそだろうと自分なりの制限があって。
数日経ったv今は自棄にも近い。
当然今日も『またか』とうんざり顔の警備が向こうからやってきて、その姿が登場した段階でゲームオーバー。
さすがに暴れるなんて馬鹿はせず、『すみませんでした』と頭を下げて自らその身を外に出す。
そうしてトボトボと歩いて向かうのはあの屋上だ。
今日だってその予定で、すでに建物を振り返る事もせずお決まりの流れとして足を動かし始めた。
なのにいつもと違って自分を引き止める様な背後からの声かけ。
さすがに足を止めゆっくりと振り返れば少し驚いた。
立っていたのはスーツ姿のサラリーマン的な人間でなく、長いプラチナブロンドを横に束ねて、綺麗な水色の双眸をこちらに向けた自分とは普通であるなら無縁そうな人。
毛色の違う生き物だと思った。