だから何ですか?Ⅱ【Memory】
にこやかな笑みをこちらに、時折クスリと笑い声を混ぜて、足音すら感じさせぬ軽い足取りで近づいてきた姿には少し戸惑う。
一瞬絡んでいた目が泳いで逃げてしまう程に戸惑い動揺に満ちるのに、そんな私を興味深いとばかりに身を屈めてまで覗き込んできたかと思えば。
「無駄だよ」
「・・・えっ?」
「そんなに頑張っても世の中のルールは甘くないからねぇ。やっすいドラマみたいにたった一人の為に約束事が捻じ曲がる筈ないじゃない」
「・・・知ってます」
「うん、本当の馬鹿じゃないみたいで安心した。でも、だったら何で毎日あんなことを?」
「見てたんですか?」
「面白かったからね」
なんて悪趣味な理由を本人に偽らず言う人か。
しかもへラッと笑って悪気もなく。
心底面白い見世物を堪能していた様な感覚で。
でも、逆になんだか安心する。
誤魔化すとか偽るとかそういう姿勢で探りにきているわけじゃない。
だからなのか、失礼と言える理由に苛立つよりも警戒心が薄れる。
薄れてしまえば・・・、
「・・・・好きな人に会いたかったから」
自分の初めて強く抱いた欲求を初めて会ったばかりのその人に晒した。
それが・・・・ミケだった。