だから何ですか?Ⅱ【Memory】





いや、本当はこんなセクハラ発言する気はさらさらなかったんだって。


でも目の前で亜豆が誘うように自分の胸揉んで見せるから!!


いや、更に掘り返せば俺が『感触のいい』とか余計な言葉付属させたせいか。と、結局は自分に反省を求めるしかない結論に落ちてしまう。


とにかく少し自分を落ち着けようと息を吐き、仕切り直しだと亜豆に意識を戻すと丁度煙草を咥え直した瞬間だった。


いつ見てもこのクールな喫煙スタイルは見惚れる程魅力的だと思う。


だけど、今はそうでなくて、



「言いたかったのはメールだよメール!」


「・・・・」


「今から就寝的な時間にああいうメールしてくんなよ!」


「・・・ああいう?」


「コレだよ、コレ!」



見ろ!と、すでに取り出していた携帯を操作し、昨日受信したメールを送信者本人に確認させるというどこかおかしな場面。


亜豆といえば微塵も動じずにドライに煙草を吹かし、示された携帯の画面にチラリと視線を走らせると、



「確かに私が送ったメールですね」


「それは分かってる!分かってて持ち出した話だっつーの。そうじゃなくて、内容だよ、内容!」


「伊万里さん、」


「・・・あっ?」


「・・・したいです」


「っ・・・」


「・・・・って、いう、このメールの何が問題ですか?」


「っ・・お前・・・何わざわざ雰囲気込めてメール内容文読み上げてくれてんだ!?まさにコレ!!今のこの俺の焦りとか戸惑いとか欲情とかまんま昨夜同じ状態になったからな!?風呂上りにビール飲みながら何の気なしに『珍し~』なんてメール開いてむせ込んだわ!」


「それは是非見てみたかったですね」



残念です。とどこまでも冷静な無表情で淡々と切り返すこのお方とメールを送った人間は同一人物だろうか?




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