だから何ですか?Ⅱ【Memory】





「悪いねぇ。俺、空手は段持ちのボクシングもかじったから」



そんな事を言いながらも『痛って』と小さく言葉を落としながら男を殴った手をプラプラと振っているその人。



「都会は恐いねぇ。早朝からカツアゲとか当たり前なんだから」



そんな呆れたような、男達を否めるような言葉を弾き、その姿がゆっくりとこちらに向かってくるのは分かった。


でも、まともにその姿を捉える余裕もない程自分は嫌悪に満ちていて、助けてもらったらしい状況下なのに再び人が増えたという感覚の方が大きくて嫌悪の割増。



「おい、大丈夫か?」



そんな声かけと伸びてきた手と。


助け起こす為に腕を掴まれ体が程よい力で起き上がった瞬間。


あ、限界・・・・。



「うっ・・げぇほっ____」


「っ___!!?」



助けてくれた人の存在感に限界迎えて吐くとか・・・・失礼極まりない。


そんな道徳的な思考くらいは持ち合わせていたけれど、これは生理的な現象だから『すみません』としか言いようがない。


まぁ、・・・すみませんの言葉すら音を発せなかった私なのだけど。



「っ・・・・人助けして、・・吐かれたのは初めてだな」



すみません。


心ではそんな謝罪の気持ち60%嫌悪感40%と言ったところか。


やや、謝罪が上回るだけ人としてまだ自分は壊れていないなと思えど、気持ち悪いものは気持ち悪い。



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