だから何ですか?Ⅱ【Memory】
それでもどうにも求める感触が手に得られず、パタパタと色々なところを探って叩いてしていれば静かに横から距離を詰めた亜豆に煙草からの移し火。
この絶妙な顔の距離と火が移るまでの時間が好きだ。
焦れて焦れて・・・じりりと熱が体にも飛び火する。
さして待たずにゆらりと立ち上る煙で絶妙な艶っぽい瞬間の終幕。
それに伴ってスッと離れる姿に物悲しさを感じる自分はどうかしてる。
どうかしてるほど・・・
「・・・うん、確かに人肌恋しいのかもな」
そんな、亜豆の言葉と同調したような感想をポロリと零して、口に広がった馴染んだ苦みを堪能しながら煙をゆっくり吐きだした。
「・・・・あの、」
「ん?」
かけられた声に特別違和感はなく、振り返ったのだって何の気なし。
軽い応答で声を響かせ捉えた姿は何か言いかけようとしたままの口の形で俺を見つめ、それに対して『何?』とばかりに軽く笑って小首を傾げると。
「・・・・・ライター」
「えっ?」
「いえ、そう言えば伊万里さんって煙草愛好家なわりにこだわったジッポとかじゃなくライターだなって」
「・・・ああ、うんまぁ。・・・ってか、聞きたかったのってそれ?」
「何でですか?」
「いや、声かけてから次の言葉まで考える様な間があいてたから」
「ああ、一瞬『ジッポ』って名称が頭に出てこなくて」
「ふーん、」
そういう様な間だったか?と疑問に思えど答えた亜豆は全く視線を逸らさず無表情で俺を見つめている。