だから何ですか?Ⅱ【Memory】
更に追及すべきなのか躊躇って見つめていれば、
「・・・私の問いかけはスルーですか?」
「えっ?」
「内容すら忘れてます?まぁ、別に大した話じゃなかったですけど」
「いやいやいや、覚えてる!えーっと・・・あ、ほら、ライターの話だろ?ジッポとか使わないのかって」
「・・・・一瞬忘れかけてましたよね?」
「・・・すみません」
いや、本当マジで一瞬忘れかけていたから、その非難の眼差しは甘んじて受けよう。
すみませんと降参示して両手を上げれば、フンっと鼻を鳴らしてその視線を景色の方へと動かした亜豆。
本気では怒っていないのは分かっていつつ、ポリポリと頬を掻いて気まずさを逃すと。
「ジッポねぇ。いや、持ってたのよ、昔はね」
「そうなんですか」
「おい、聞いておいて興味なさげに反応するな」
「興味なきゃむしろ無反応です」
「可愛くねぇな」
「いきなり天邪鬼ですか?」
「ああ、はいはい、亜豆さんは可愛いですよ」
「話の続き・・・どうぞ」
本当、素直に会話もままならない。
どうしても微々たる事に脱線して、でもその脱線がまた楽しくて、無表情の中に時々垣間見せる感情を見落とさず収めた瞬間は実に気分がいい。
今みたいに『可愛い』の言葉に僅かはにかんだ口元とか。