だから何ですか?Ⅱ【Memory】




それに満足しまずは煙草を一服。


吸った分だけ煙を噴いて、その煙が空気に同化し消えて行くのを見収めた頃合い。



「人にやった」


「・・・・」


「いや・・・預けた?」


「何でそんな曖昧ですか?」


「返ってくるか分かんねぇから。・・・でも、戻ってくるといいなぁとは思ってる」


「・・・・そうなんですか。友達にでも貸したんですか?だったらその人に言って返してもらえばいいのでは?」


「・・・友達って言うか・・・行きずりの・・・モノクロの世界に置いてきたっていうか」


「・・・・・抽象的な言い方ですね。なんか・・・特別な思い出ですか?」



特別かどうか。


そんな亜豆の問いかけに見つめていた景色がじわりじわりとトーンを変える気がした。


セピアになってそのままモノクローム。


自分が単に過去の記憶を引き起こしているのだと理解はしている。


そうして視界に映しだされるフィルム映像の様なぼやけてカタカタと途切れる残像の様な人物の後ろ姿。


その姿に懐かしさを感じ、フッと笑いを零した瞬間に回想の終幕。


移るのは只々色に溢れたリアルな世界で、夢から覚めたように余韻に浸りながら息を吐く。



「特別なんだろうな」


「・・・・・」



懐かしいと笑えるくらい。


思いだせばまだ・・・会えないだろうかと思うほど。


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