だから何ですか?Ⅱ【Memory】
ハッとしたように俺の双眸に絡んできた視線にはにっこりと笑って見せ体を戻した。
「まぁ、そんなんで・・・色々と思い入れあってね。どうしても新しいジッポ買う気になれないっつーかね」
「・・・・それは・・戻って来てほしいですね」
「まぁな。・・・まぁ、まだ人生は長いって事で。その内奇跡的にドラマ的に戻ってくるの淡く期待してるよ」
「・・・・じゃあ、・・・戻ってくるまでは私がライターしてましょうか」
「・・・・えっ?」
「好きでしょ?・・・煙草の移し火」
「っ~~・・・煽るな」
さっきまでなんか悲愴な顔してた癖に、ガラリと変わって妖艶さを見せる亜豆には本当に参る。
俺があの瞬間を好きでいることを見抜いている。
そしてこいつの事だから、あの瞬間に酔う様な俺の姿を見るのが好きだとでも思っていそうで。
ああ、クソッ・・・鎮静させたはずの熱が再燃焼しそうで危うい。
過去の話の間に昨夜からの煩悩を忘れかけていたというのに、きっかけがあればすぐに着火しそうな自分も発情期さながら。
そんな自分の消火を図って、亜豆から意識を外して視界には景色を映し込み煙草を噴かす。