だから何ですか?Ⅱ【Memory】




なのに、なかなか時と場所をまるで選びも考えもせず浮上する欲は祖の消火にも困難をきたす。


むしろ熱を下げようと躍起になるほど煽り風のように熱を増すような。


落ち着けって。


朝だぞ?会社だぞ?


ああ、でも始業時間にはまだ余裕あるんだよな。


・・・って、そうじゃなくて。


なんて、ひたすらの葛藤。


理性、理性、本能、理性・・・。


そんな風に理性の間に必ず本能が言葉を挟んでなかなか思う様にならない。


前はどうだった?


こういう時はどうしてた?


そんな風に解決策の応用を探すのに見当たらなくて、それでも思い悩んで探り当てた答えは・・・・こんな葛藤を抱いた事が無いと言う事実。


そうだった・・・、亜豆が初めてだったんだっけ。


こんな風に抑えが効かない程欲が疼くのも。


そんな現状では無情な結論を得ると苦笑いしか浮かばない。


どうしたもんかと心では頭を抱えた様な瞬間に、不意にキュッとか弱い力でコートを引かれる感触を得る。


それを確かめる様に視線を動かせば、俺のポケットに華奢で白い指が一本絡み、その指から腕を辿い視線を走らせ捉えるのは絡まぬ視線の横顔。


それがまた・・・焦れて誘惑的で。





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