だから何ですか?Ⅱ【Memory】
何とも言えない鈍い声音。
そりゃそうか、普通であるなら良心的に格好良く悪漢からか弱い少女を助け出した、映画や漫画であるなら最高の見せ場であるだろう。
その盛り上がり一番の瞬間に思いっきり目の前で吐き散らかしたのは私。
申し訳ないと思えどどうしようもないのだ。
こんなに他人と接した時間は久しぶりすぎて、さっきの2人で限界ギリギリ、この人でキャパオーバーという流れでのこの惨状。
決してこの人のせいじゃない。
この人が良い人悪い人関係なくただ自分以外の人というカウントでアウトだったのだ。
さすがに面倒だと思っているだろう。
一応悪漢からは解放したのだ、その後のこの面倒事にまで関わりたくないと思う筈だ。
それでいい、それがいい。
『助けたし、じゃあ、これで』
そんな言葉を残して立ち去ってくれていい。
どうせ、見上げれば薄気味悪い女が吐いた。と嫌悪に満ちた姿があるんだろう。
確かめる目的ではなかったけれどようやく顔を上げた瞬間。
「持ってろ、」
「っ?!」
胸元に押し付けられるように渡された鞄をうっかり受け取ったのは反射的。
えっ?と思った時には鞄を持った私を大人が子供を抱く様に抱え上げて歩きだしたその人。