だから何ですか?Ⅱ【Memory】
『ああ、』と言う程度の懸念や警戒でいいのだろうか?
俺からしてみれば突き崩せる隙のない余裕に満ちたライバル出現という感覚だった。
どう見ても性質が悪そうで、遠慮なしに横恋慕をしてきそうな雰囲気であったのに。
『掻っ攫うよ』
そんな響きと笑みに危機感と不安からあの時は逃げだした程。
「盗られたく・・ねぇな、」
今も脳裏にあの姿を思いだせば、思わず零れた本心と抱きしめている腕に力も入る。
手放すまい。とキュッと抱きしめて、その感触や匂いに安堵して息を吐く。
「・・・やっぱり守ってあげたくなる人ですね」
亜豆の確かな存在感に安堵し緩々と無駄に抱いた警戒心も緩み始めたタイミングに、そっと頭を撫でてくる感触と落とされる言葉。
それに最早抗うまい。
「それでいいよ。守って・・・傍に居てくれるっつーならそれでいい」
そんな事を思って語って程々、快楽の余韻も熱も綺麗に引いて、乱れていた衣服を整え、鏡がない分確認できない身支度は相手に頼む。
髪の乱れとか化粧の崩れとか。
適度に見た目良く整って、俺もほぼ最初の状態に亜豆も今髪を綺麗に纏めあげて元通り・・・、
「・・・あれ?」
「はい?」
「今日はネックレスしてないんだな」
「ああ、それ。伊万里さんに聞こうと思ってたんです。部屋に落ちてなかったか」
いつも通りだと完結させようと思った瞬間に、一つだけ微々たる不備を見つけて目が留まる。