だから何ですか?Ⅱ【Memory】
存在感は然程ない程細く飾りも小さないつものネックレス。
それでも自分の中では無いと気がつく程印象が強かったのだと今更理解してそれを口にした。
指摘されるとようやく思いだしたかのようにネックレスの事を逆に確認してきて、それに思い当る記憶はあるかと回想を図っても覚えがない。
「ん~・・・、いや、今のところ気がついてないけど。・・・もしかしたら布団の隙間とか床に落ちてるかもな。アレ結構細いし意識しないと気がつかねぇかも」
「そうなんですよね。気がついたら見当たらなくて。部屋には無かったから伊万里さんの部屋か最悪どこかで落としたか」
フゥッと息を吐き、仕方ないと半分諦めた様な顔で自分の首元を抑える姿を何の気なしに見つめてしまう。
俺もなんか残念というかショックと言うか。
あの線の細いネックレスは何となく好印象なアクセサリーで、亜豆の肌の上で音もなく不規則に動くのが好きだった。
「俺の部屋にあるといいんだけどな」
帰ったら真っ先に探そうと心に決めて、ポンポンと亜豆の頭を宥めるように撫でるとようやく秘め事の時間からリアルに戻った。
始業時刻から凡そ20分の遅刻。
腕時計で時間を確認し、堕落したものだな。と自分に苦笑しながら部署に戻った。