だから何ですか?Ⅱ【Memory】














今日という日程自分に呆れ、人の噂話にうんざりした事は無いかもしれない。


よくよく考えれば前日の騒ぎですでに注目を浴びる対象であった自分なのだ。


20分の遅刻をごまかす様に、何食わぬ感じに元々いつも通り居たかの如く部署を闊歩し始めたのに。


最初にすれ違った姿が『あっ』と声を上げ、そこから反応が波紋の様に広がり一瞬にして視線の矢尻が刺さった。


そこからはヒソヒソチラチラ。


たまにはっきりと耳に響く『秘書課の亜豆さん』とか、『二股』『浮気』『修羅場』のワードの数々。


そこから推測出来る噂とくれば、



「伊万里くんの裏切り者ぉ!!亜豆さんとつきあってるとか、何だよそれぇ!?でも、なんか二股かけられてて昨日会社の前で修羅場ったんだろ?!」



あ、推測するまでもなかった。


まさにヒソヒソと囁かれる内容を躊躇いも遠慮もなく本人に追求してくる無神経な井田がいた。


しかも、どこかワクワクとした目で追求してきた男には、散々な意識の的になった疲労もあってか近くにあった消しゴムを投げつけてしまうなんていう子供の様な対応。


最初こそ噂の歪みを正そうと、二股とか浮気と言った内容には否定を唱え、正式に付き合っている関係だと宣言すれば、それはそれで何故か女子社員に絶叫されると言う状態続き。


それでも独り歩きした噂と言うのはいくら本人が真実を述べても先走った虚実の方が強力に根を生やすらしい。


抜いても抜いてもキリがねぇ・・・。




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