だから何ですか?Ⅱ【Memory】
軽く身を乗り出して自分を売り込まん勢いの小田には、驚きつつも最近はだいぶ慣れてきた。
お互いに秘めていた感情を今更隠す理由もない。
小田に至っては逆に開き直ってやるモードらしく、これでもかと度々自分をアピールし始めたからその度に苦笑い。
クリスマス以降はそんな関係であったのだ。
ちょっとした会話の端に『好きです』とか『乗り換えませんか』とか。
本気でありつつ挨拶代わりに近い告白に、俺も笑って亜豆一筋をあからさまに言葉に示す。
最早、何のどんな勝負なのかと言いたくなる程、告白する方も振る方もお互いに開きなおっていて清々しい。
「ほーんと、お前もなかなか折れないねぇ。見込みなしよ〜?恋愛下手な俺が二股なんて器用ごと出来るわけねぇだろ」
「見込みなしでも些細なチャンスは見逃したくないかなって。ほら、今まさに亜豆さんに別の男のヒトが!?って、愛情揺らぐ展開じゃないですか」
「ハハッ、揺らがね〜、揺らぐはずもない。むしろアレの可愛さを知れば他の男が寄ってこねぇ方が不思議なの」
残念。と強気に笑って乗り出し気味の小田の額をトンと小突く。
きっぱりと言いきった言葉にむぅっと眉根を寄せた表情は素直に可愛いとは認めよう。