だから何ですか?Ⅱ【Memory】





苦し紛れの素直アタックと言うのか。


亜豆との事があってからか駆け引きある告白よりも『好き』だと単純な告白の方がどこまでも大きく心に響く様になってしまっていて。


それにプラス、大胆なのに控えめも垣間見る様な抱擁の感触。


抱き付いてきたくせに巻きついている手は遠慮がちで、指先なんかは小刻みに震えている。


発した声音も緊張に満ちているのが分かって、そんな必死さに不意を突かれたというのか。


そんな動揺に満ちた俺の反応にどうやら小田も気がついたらしく、



「・・・今・・・もしかして私の事可愛いとか思ってくれちゃったりしました?」


「っ・・・いやいやいや、ってか・・離れろって。誰かに見られるっ」


「みんな直帰して現状私達だけですよ」


「だったらなんか尚の事悪いっ!すげぇ浮気してる気分!」


「本当ですか!?浮気出来てますか?!」


「っ・・喜ぶなっ!ってか抱きしめ直すな!離れろって!」


「ヤダッ、このまま意識しまくって好きになってください!」


「お前なぁ___」







「・・・・・・あの、乗らないんですか?」






「っ・・・・あ、」



騒ぎすぎて意識がお留守すぎた。


ワイワイとくっつき騒ぐ様は他者からみたらいちゃついても見えた時間ではないだろうか?


勿論俺としては本気で『離れろ』と焦っていた場面で、引っ付いている小田を引きはがそうと躍起になるのにそれに反して小田が躍起に引っ付いて。


『いい加減にしろ』と思ったまさにその瞬間だ。


響いた声音に一瞬で血の気が引いた気がする。





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