だから何ですか?Ⅱ【Memory】
いつの間にエレベーターが下りて来ていて、いつの間に扉が開き、いつからこの光景を見られていたのか。
・・・うん、何よりも最後の問いかけが一番重要で死活問題な気がする。
小田に向けていた視線を声のした方に動かせばその先はいつの間にか到着していたエレベーターの内部に向かって、操作盤に手を伸ばし扉を開いているのはひたすらの無表情のクールビューティーな秘書課の亜豆さん。
たまにあるんだ・・・。
亜豆の当たり前の無表情が異様に恐く感じる瞬間が。
まさに今がその瞬間。
普通であるなら自分の恋人が他の女と仲睦まじくじゃれあっていた場面の目撃にもっと感情露わに怒鳴りこんでもいい気がする。
と、言うか、そうされた方が幾分か気分が軽くなるというか・・・。
今もまるで他人の如く、無表情の冷静で見つめてくる姿の恐い事。
うっかりその対応に怯んで硬直していれば、
「乗らないんですか?じゃあ・・、」
「いやいやいや、待てっ、閉めんな!いや、待ってください!」
「そんな慌てて扉にダイブしなくても、」
「お前が閉めようとするからだろ!?」
「いえ、私も下の階に用事ありますから、じゃれ合うのに忙しく乗る気がないのなら閉めようとするのは普通の感覚では?」
「お前・・普通の感覚語るならもっと普通に反応すべき場所があるだろうよ」
どう見てもエレベーターの問題より自分の恋愛問題のが大きくないか!?