だから何ですか?Ⅱ【Memory】
私を抱えまだ無人に近い街を、道路を横切り歩いてくれる彼は多分かなり良い人なのだ。
だって、多分だけども・・・振動が緩い。
気分が悪い私を気遣ってなのかなるべく揺れが少ない様に歩いてくれている気がする。
「俺、カラオケでバイトしてたことあっから、吐かれたり、それ処理もまあまあ慣れてるから」
・・・だから、吐けとでも?
いや、もう吐き気を催すような不快感はないからむしろ吐けない。
どちらかと言えば吐いたばかりの口を濯ぎたいのと水分補給がしたいくらいで。
あ、でも・・・300円、ちゃっかり持ってかれちゃったしな。
吐いてしまえば胃の腑が空になるわけで、嫌悪が収まってくれば当然入れ替わる様に、
ぐぅぅぅぅきゅるるるる・・・・・。
胃の腑が鳴いた。
そりゃそうか。
微々たるも摂取していた栄養を消化前に吐き出した現状だ。
こんどは空腹で気持ち悪くなりそうだと目を細めれば、
「あはは、お前の身体神経図太いなぁ。・・・待ってろ」
「・・・」
自分でも図太いなと思っていたから特別羞恥も苛立ちもない。
それでも自分に軽く呆れていれば持ち上げられた時とは逆の浮遊感を得て、ゆっくり下降した身体はストンと何かに座らせられた。