だから何ですか?Ⅱ【Memory】
人の多い外とミケの自宅、どちらが明確に安全で危険かは分かっている。
分かっているからこそ逆に危険でもある。
ミケの思惑は一体何なのか。
探ろうにも顔なんて見えない、声だっていつでも悪戯に満ちている。
判断に迷う場面だ。
天秤にかけられている物があのジッポでなければ迷う事なく決断出来るというのに。
『リーオ?』
「っ・・・」
『そんな悩む?リオだって分かってるくせに。俺が本気でリオとの復縁望んでるわけじゃないって、』
分かってるよ。
分かってる。
今更だった。
もう会いにくるなんて思ってなかった。
だって、ミケは2年前のあの日に私に初恋役を降りたのだ。
ミケが望むのは再びの役の座を求めてじゃない。
私に好意的な眼差しを向けても、優しく愛おしむ様に触れても、過去の様に深くまで入り込もうとはしていない。
分かってるのだ。
「・・・16時半」
『待ってる』
そんな返事を聞き入れると余計な言葉は綴らずに通話を終了させた。
画面の暗くなった携帯を口元に寄せて深く長い息を吐く。
無意識に触れたのは首元で、指先に感じる絆創膏の感触に複雑に笑ってしまった。
また、無防備だと怒られる判断なんでしょうね。
それも分かってる。
・・・分かっていても、なんです。