だから何ですか?Ⅱ【Memory】
『俺が【伊万里 和】になってあげる。
______想像して、』
越えられる筈のなかった一線を越えた瞬間。
合わさった唇の感触に歓喜し逆上せ酔いきる反面、サラサラと虚しさに変わりゆき完全には満たされない欲求。
きっと・・・永遠の渇望。
極上の甘美はすぐに毒に変わる。
そんな呪いを選んだのは自分だったんだ。
俺の知ってるリオは、
リオが見せてくれた全ては伊万里あって得たもの。
本来、伊万里しか見るはずで無かった、伊万里本人も見る事がなかったかもしれないもの。
「でも、リオはとうとう本人にも晒したね。見事伊万里はその虜なんだから・・・凄いよ」
素直な賞賛だ。
どこまでも直向きな恋心に恨みはない。
だから、ただ愛おしいとクスリと笑い、意識の無いリオの頬を優しく一撫で。
目が覚めたら怒るんだろうね。
「楽しみだなぁ。俺ね、リオの怒ってる顔も大好きだよ」
上質なベットの上。
意識の無い姿に話かけてツンツンと白く柔らかい頬を突く俺は、端からみたらかなり危なく飛んだ誘拐犯に見えるのか。
まぁ、実際誘拐したわけだから今更どんな目で見られてもいいわけだけど。
「もう少しだけ・・・つきあってよリオ」
届くはずのない言葉を一方的に落としきると彼女の携帯を取り出し、鼻歌まじりに指先を動かした。