だから何ですか?Ⅱ【Memory】
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自分でも自分の糸が張り詰めているのが分かる。
それでも焦りに飲まれて我を忘れての行動の選択をしているつもりはない。
向けられる視線の気迫に逃げるでも飲まれるでもなく、意思の強さのまままっすぐに見つめる。
緑の眼光との対峙。
「前の印象と違う、」
「訳あって、」
決してこの再会を望んで喜び快く招いてくれたわけではない。
むしろ、軽く不機嫌ちらつく険しい表情と言える様な。
獰猛な獣の眠りを妨げた様な、そんな張り詰めた緊張感の中で、それでも向こうからかけてくれた言葉に敵意はない。
もちろん好意もないけれど。
菱塚の社長室もかなり広く立派と言えるけれど、この部屋は更に広く壁一面がガラス張りの高層階だ。
家具に至っても、デスクからソファからテーブルから、出されたコーヒーのカップまでが額の読めない高級品であろう。
だけども、今はそんな高級品に目を見張るでもない。
「まぁ、それはさて置いて。・・・今こうしてる意味がわからないんだが?」
「お力をお借りしたくて、大道寺さん」
束の間の静寂を破って弾かれた拒絶的な言葉。
それにはっきりと要求を口にすれば、不機嫌そうな顔が更に不機嫌に眉根を寄せた。