だから何ですか?Ⅱ【Memory】
―数時間前―
来ない・・・。
こうして時計を確認するのも何度目か。
腕時計を見て、その視線を会社の入り口に移して、と幾度となくその工程を繰り返したと思う。
寒い空気に熱い息を吐きだし、白く変化したそれが立ち上るのを見上げて見送って。
そんな時間に特別意識しなかったのは定時後30分内までか。
部署が違えば終わり方も違うだろう。
片付けもあって必ず同じころ合いに会社を出ることなど出来る筈もない。
その位は想定の範囲内で、今日はたまたま自分の方が早かったのだろうと特別な意識なく会社前の花壇の位置で亜豆の姿を待っていたけれど。
気がつけば17時半も過ぎ、さすがに遅くないか?と携帯を取り出す。
連絡は・・・なしか。
さすがに自分が遅れそうな事態には連絡をくれそうなものなのに。
はて?と、腑に落ちない遅延や連絡のない携帯に方眉を上げ、もう一度会社を見上げて判断に迷う。
秘書課まで覗きに行くか?
でも、絶対に残業してる人間もいそうだしな。
それに、自分が向かった途端に入れ違うなんて事もあり得る話だ。
そんな迷いに満ちている間にも時間は過ぎて、気がつけばあと15分ほどで18時という頃合い。