カラフル
彼女、凪の事を知ったのは去年の夏。
夏休みの補習をさぼっていた時に見付けた。
彼女の横顔、綺麗な笑顔。
第1校舎と第2校舎の間にある小さな中庭に、仰向けになって彼女は寝ていた。
それを見た瞬間、拓海の心臓に衝撃が走った。
一目惚れ、だった。
最初、小さかった想いは、時間が経つにつれ大きくなり、クラスが同じになった時は自分でも驚く程に舞い上がってしまった。
「あー、こむ、小室……。」
「ん?」
凪は半分の中華まんを美味しそうに食べている。
あー、可愛い。
そう思ったのは絶対に内緒だ。
「名字だと呼びづらい……。面倒だし名前で呼んでいい?
俺も拓海で良いし。」
拓海は中華まんの最後の一口を飲み込んで聞いた。
「別に良いよ?凪だと2文字だしね。楽で良いよね。」
それだけの意味じゃないんだけどね。
拓海は小さく呟いた。