カラフル
「…………。」
「…………。」
筆で塗るペンキの音が耳に届く。
気まずい空気。
逃げ出したい感じ。
「…あ、あの…登坂くん…?」
「ん?」
「私やるから帰っても良いよ?」
作り笑いで拓海の顔を覗くと妙に真剣な顔でびっくりした。
「や、やるよ。俺がいけないのは事実だし。」
1回、凪の方を見るがすぐに看板の方へ視線を移してしまう。
それより、と拓海は頭をかきながら言葉を続けた。
「小室こそ平気なの?彼氏と帰らなくて。」
筆を持つ凪の体がぴくっ、と跳ねた。
「………?」
「あ、うん。」
拓海が凪の顔を見ると想像とは正反対の顔をしていた。
悲しそうな、寂しそうな。
「……昨日、別れたから。」
拓海にとってその言葉は衝撃的すぎる言葉だった。