カラフル
「……彼がね、浮気してたの。」
凪は寂しそうな顔で言う。
拓海の顔から笑顔が消えていた。
「この前、職員室に行く途中に窓から見えちゃって。
私よりお似合いの子とキスしてたの。」
頭から離れない映像。
まるで映画を見ているような、自分が邪魔な存在だと知った。
「私、彼には幸せになってほしかったから。
好きな人と居られるように。」
凪は悲しい気持ちを悟られないように笑顔で言った。
「……小室は凄いな。」
拓海の言葉に筆が止まる。
「え?」
「好きな人には好きな人と居てほしい、か。
普通は好きな人は自分と、とか思うけど。」
拓海はペンキの色を混ぜながら凪の方を見た。
「小室は凄いな。」
拓海の優しい笑顔を見た。
凪の肩から力が抜ける。
「にしてもあいつ、爽やかな顔して最低なのな。
後でぶっ飛ばしてやる。」