幸せの種
園長先生は相変わらずわたしを『空気』だと思って、語ってくれている。
「琉輝に必要なのは、小規模で安心して勉強に励める場所。
千花に必要なのは、大規模であっても、信頼できる親代わりの先生がいる場所。
ミーナに必要なのは、療育と治療が受けられる場所。
それぞれのニーズに合わせて、児童相談所や親権者と話し合って決めたんだけどなあ。
私の思惑とは全然違う噂が飛び交っているようで、ちょっと悲しいところだよ。
ひどく傷つけられる子どもがいるようだったら、ちょっと一喝してやらねばならないね。
親の心、子知らずっていうのはこういうことを言うんだろうか……やれやれ」
園長先生はソファから立ち上がり、ネクタイを締め直した。
「周りが少し静かになったようだから、空気の入れ換えをしようかね。
それから、ミーナを呼んでもらうとするか」
園長室と職員室をつなぐドアが開け放たれた。
「さあ、換気を済ませてミーナを呼び出そう」
園長先生がやっと、私の目を見てくれた。
今がチャンスだから出ていっていいよ、という意味だと理解して、わたしは園長室を出た。