幸せの種
「ちーちゃん、ですか。早く仲良くなれるといいな」
「大丈夫です。ちーちゃんはとても可愛いですよ。甘えん坊でおっとりしていて癒やし系。藤島先生とよく似たタイプだと思います」
「え? 私、そんなにおっとりとした甘えん坊ですか? うーん、だから子ども達から舐められるのかな」
「いいんですよ、それで。みんな肝っ玉母さんみたいな先生ばかりだったら、それを真似する女子がますます強くなってしまいますから」
「そう、でしょうか・・・・・・」
いつもポジティブな穂香が、少し自信をなくしている様子であることに、数日前から気付いていた。
子どもから何か言われたのだろうと陽平は考えた。
「藤島さんにはいいところがいっぱいありますよ。穏やかなところ、優しい言葉づかい、礼儀正しくて時間に正確なところ。ちーちゃんのお手本になります」
「髙橋さんって、本当にいい人ですね! たくさん褒めてもらって、やる気スイッチ押された感じです」
――いい人、という言葉を何度言われただろうか。
カウンセリングの技法のひとつを使ったに過ぎないというのに。
陽平は『本当はそんなにいい人ではない』という言葉を飲み込んで、曖昧に笑った。