幸せの種

穂香先生は仮眠室から肌掛け布団を持って行き、ミーナちゃんの背中側になっている出入り口へ回った。

号泣しながら琉君を呼んでいるミーナちゃんの背後に穂香先生がさっと肌掛け布団をかけ、そのまま抱きしめた。

布団と穂香先生に包まれたミーナちゃんは、最初暴れていたけれど、そのうち静かになった。


「どうして、みんなうちの邪魔をするの」と泣き崩れるミーナちゃんの背中を、穂香先生も泣きながらさすっていた。



そのあとすぐに髙橋先生が来て、穂香先生と三人で話していたようだった。

わたし達はこの日、入浴日だったのでそのあとの話し合いがどうなったのかわからない。


そのままミーナちゃんは、市内の病院へ入院したらしい。

最初に絡まれたのがわたしだったこともあり、穂香先生が説明してくれた。


「ミーナちゃんは、せん妄状態と言って、現実とそうでないことの区別がつかなくなってしまったの。だから彼女が言ったことはほとんどでたらめだと思っていいから」

「でも先生、ミーナちゃんは多分、ひとつだけ本当のことを言ってました」

「なあに?」

「琉君のことが好きだって。だからわたし、今までいじめられていたんだなって、やっと気がついたんです」

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