幸せの種

「穂香先生、わたし、ミーナちゃんのことが、やっと少しだけ解った気がするの」

「そう……例えばどんな?」

「どうやったら、琉君に振り向いてもらえるんだろうって考えて、一番効果があったのが、わたしをいじめることだったんです、多分」

「どうして、そう思ったの?」

「わたしをいじめたら、琉君が止めに入ってくれたり、あとから話をしに行ったりすることがあるから。わたしをいじめることでしか、ミーナちゃんは琉君と話せなくなっていたんだなって……」

「とても寂しいね。それを続けるほど、琉君の気もちはミーナちゃんから離れていくのに、それでもいいから話したかったってことよね。ミーナちゃん、本当に不器用なんだから……」

「それと先生、本当にミーナちゃんは妊娠していたの?」


思い切って聞いてみたわたしに、穂香先生は目を丸くした。


「ミーナちゃん、そんなこと、言ってたの?」

「うん。琉君との子どもだって」

「嘘嘘嘘嘘! 真っ赤な嘘だから!」

「でも、ちしま学園に戻ってくる前に手術したとか、琉君がさくらハウスに行ったのはそのせいだとか。みんな信じちゃったと思います」


私の言葉に、穂香先生は頭を抱えた。

そして一言。

「良かった、琉君がここにいなくて」と呟いた。

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